「リングにかけろ」概要
作者/車田正美
掲載誌/週刊少年ジャンプ
連載期間/1972年2号~1981年44号
主な登場人物/高嶺竜児 高嶺菊 剣崎順 香取石松 志那虎一城 河井武士 など
主人公高嶺竜児がプロボクサーだった亡き父の遺志を継いで世界チャンピオンを目指すべく、姉である菊の教えを受けて成長していくいわゆるスポ根系のボクシング漫画。
略称「リンかけ」
リングにかけろ 名勝負 都大会決勝 高嶺竜児vs剣崎順 PART②
いつやるの? 今でしょ。
都大会の決勝、両者一歩も譲らず、勝負は最終ラウンドへ突入しようとしていた。
ジュン・イズ・ザ・グレーティスト!
YEA!
ジュン・イズ・ザ・ビューティフル!
YEA!
ジュン・イズ・ザ・キング!
レッツゴー JUN!!!!
(またか…..)
剣崎ガールズの面々はよほど「順さま」に勝ってほしいのか、応援のヴォルテージは上がりっぱなしだ。
それにしてもこのシリアスな戦いに、不謹慎にも、かわいこちゃんの軍団をちょっと使いすぎではないだろうか?
男と男の戦いには野太い声援やブーイングの嵐が似つかわしい。
ゴング開始前、剣崎セコンドでは何やらスタッフがもめている様子。
剣崎の腕を心配した専属ドクターやマネージャー金平が試合を中断するよう剣崎を説得にかかったのだ。
確かに剣崎は日本ボクシング界の至宝である。
必ずや将来世界チャンピオンにまでのし上がる素質を持った男だ。
この一戦で、以後ボクシングができないほどのダメージを両腕に負ってしまったら、そんな野望もはかない夢と終わってしまう。
今をときめく井上尚哉や那須川天心などが、同じ状態なら即刻試合はストップだ。
だが、剣崎はちがった。リングを降りるつもりなど毛頭ない。
以下は剣崎の弁だ。
「おれは5年後には必ず世界タイトルを手中におさめるだろう。(相変わらずすごい自信)
だが、その時おれの前に立ちふさがってくるのはどこの国の人間だと思う?」
「それはアメリカでもメキシコでもねえ、日本だ、日本にいる高嶺竜児だ!」
なるほど、もっともだ。
剣崎のいう通り、どうせ今中断したところで、いずれはたたきつぶさねばならない男が目の前の高嶺竜児なのだ。
(なら、いつやるの?)
(今でしょ)
「タオルなんか投げ込んだやつは殺すぞ! 」と剣崎。
(おーこわっ)
かくして最終ラウンドのゴングは鳴るのである。
さらば黄金の腕
最終ラウンド開始直後、竜児は馬鹿の一つ覚えの如く、左ジャブ→左ジャブ→右ストレートのコンビネーションを使っても、また剣崎のカウンターの餌食になると考え、
左ジャブ2つのあと、そのまま左ストレートを打つというフェイント攻撃に出た。
ところが、剣崎はそれを待ってましたとばかり、今度は右のライトクロスカウンターを竜児の顔面に鮮やかにヒットさせる。
竜児たまらず、ダウン。
この瞬間、誰もが剣崎の勝利を確信した。
ところが、パンチを打った剣崎もライトクロスカウンターの衝撃で腕が痙攣し、その場にうずくまってしまう。
ボクシングの場合、相手をダウンさせた後、ニュートラルコーナーに戻らなければ、カウントは始まらないルールだ。
「きゃあーーー、がんばって順さまーーー!」
「立ち上がってーー、順さまーーー!」
いうまでもなく、剣崎ガールズの悲痛な叫び声である。
「おれもおちたもんだぜ、女の黄色い声に励まされてヨチヨチ歩きなんざあ….」
とつぶやきながら剣崎は何とかニュートラルコーナーにたどり着く。
ガールたちの声は確かに剣崎に届いていたのだ。
不謹慎は少しいい過ぎた。
いまだ立ち上がれない、竜児に対するカウントが始まる。
ワン・ツー・スリー…….エイト、ナイン…
「バカッ、立つな竜児、もうそのままねるんだ!」菊が叫ぶ。
これは竜児のダメージを心配してのことだけではなく、相手の剣崎がぎりぎりの状態であることを菊もまたよくわかっていて、放った言葉だったのではないか?
このときすでに、菊の剣崎に対する愛情は芽生えていたのであろう。
しかし、無尽蔵のスタミナを誇る竜児はやっぱり立つのである。
試合はまだ終わらない。
「順さまーーっ、あと一発ですわーー!」
「でもこれ以上戦ったら、順さまがどこか遠いところへ行ってしまう気がする….」
「ええええーーーっ、そんなあーーーーっ、いやだーーーーっ!」
そんなガール達の予想はのちに的中してしまうことになる。
たまらず、菊がタオルをリングに投げ入れるが、それを剣崎はサッカーボールのようる足蹴にして、リング外へ出す。
もはや両腕を使うことがままならぬほど、彼は追い込まれていた。
もうだれもとめられないところで、2人は戦っていたのだ。
試合はいよいよクライマックス。
小細工なしのの最後の右ストレートを竜児は発射!
剣崎、最後に残された力を振り絞ってボロボロの腕で左フックを合わせる。
グワキッーーー!! ビシッッッ!!
最後に倒れたのは竜児だった。今度こそ試合終了を告げるテンカウントが入る。
さらば竜….!!
リングよさらば….!!
試合後、レフリーにより手を高々とあげられた剣崎はそのまま、倒れこんだ。
その後、剣崎ガールたちの予想通り、剣崎は両腕の治療のため、単身渡米する。
別れ際、見送りに来ていた菊が渡したお守りを剣崎は憎まれ口をたたきながらも、受け取る。
「竜にいっとけ、今度会うときはもっと強くなってろってな!」
「たのんだぜ、菊…」
おわりに
2回にわたって、高嶺竜児vs剣崎順の壮絶な試合の模様をお伝えしました。
やはりこの作品の軸となっているのはこの2人の戦いであるということを再認識しました。
次回以降も「リンかけ」の登場人物や名勝負についてお伝えします。
どうぞお楽しみに!
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