リングにかけろ

リングにかけろ 世界大会準々決勝 日本代表vsフランス代表

「リングにかけろ」概要

作者/車田正美

掲載誌/週刊少年ジャンプ

連載期間/1972年2号~1981年44号

主な登場人物/高嶺竜児 高嶺菊 剣崎順 香取石松 志那虎一城 河井武士 など

主人公高嶺竜児がプロボクサーだった亡き父の遺志を継いで世界チャンピオンを目指すべく、姉である菊の教えを受けて成長していくいわゆるスポ根系のボクシング漫画。

略称「リンかけ」

リングにかけろ 世界大会 日本代表vsフランス代表

剣崎とナポレオンの出会い

世界大会準々決勝は日本代表vsフランス代表の一戦。

フランス代表はバロア家の5つ子

5つ子だけに風貌はほぼほぼいっしょ。

大将のナポレオンだけが金髪?で他の4人は茶髪?という点で差別化が図られている。

彼らは中世ヨーロッパからそのまんま飛び出してきたような貴族的オーラを漂わせ、その見た目はあの名作ベルサイユの薔薇を彷彿とさせる。

そんな彼らのことを石松が西洋のオカマ兄弟などと揶揄し、怒りを買う場面もあった。

ここでナポレオンと剣崎はどうやら以前に一度出会っていたことがストーリーの中で明らかになる。

剣崎がロサンゼルスの病院で左腕の治療をしていた時、ナポレオンもまた同じく、腕の治療でその病院に滞在していたらしい。

ある日、剣崎は病院の敷地内でナポレオンがシャドーボクシングを行っているところを見かける。

その時ナポレオンは10m以上はゆうに離れていると思われる風船に向かって、シャドーブローを放ち、見事にそれを割るという神業をやってのけた。

そのシーンを剣崎は偶然目撃し、大いに衝撃を受けた。

このパンチの原理は後ほど明らかになるが、多くの超人が登場する本作のなかでも、

リモートで相手に触れずにパンチを打ち、ダメージを与えることができるのはこのバロア兄弟をおいて他にはいない。

さすがに日本代表と同じく、ここまでパーフェクトで勝ち上がってきたチームだけのことはある。これはなかなかに手ごわい戦いとなりそうだ。

香取石松vsティファニー

日本代表vsフランス代表開戦。

いつものように先発を買って出た石松を制し

今回はおめに1番手は荷が重すぎる」といって、剣崎がリングに上がろうとした。

しかし、石松はそれをはねのけ、珍しく神妙な面持ちでこういった。

くやしいけどこの中じゃ、おめら4人の方がボクシングセンスはちょっとばかし上だ。そのおめえらにしょっぱなから倒れてもらうわけにはいかねのよ。  石松 談

石松は自分の身を犠牲にして、フランス代表のパンチのヒントを他の4人に教えるつもりだったのだ。

石松という男はボクシングセンスはビリでも男気は4人の中でナンパー1だ。

かくして香取石松vsティファニーの1戦目がスタートする。

石松は開始早々、パンチの雨あられをティファニーに浴びせていくが、ことごとくディフェンスされる。

やがて防戦一方のティファニーに業を煮やした石松は早くも伝家の宝刀ハリケーンボルトを打つ態勢に入り、地面を蹴って空中へテイクオフした。

この時を待っていたといわんばかり、落下してくる石松めがけて、バロアブロー(バロア兄弟が使う謎めいたパンチ→勝手に名付けさせてもらいました)がティファニーによって放たれる。

落下中の石松とティファニーの距離はまだかなりあったのだが、バロアブローは相手に触れずにダメージを与えることが可能なため、石松はこの目には見えないパンチの餌食となってしまう。

ティファニーのパンチによって石松のコスチュームの腹部は引き裂かれてはいるが、血は出ていないし、痛みもないようだ。

ここで石松は過去にこれと似たことがあったことを回想する。

幼い頃、故郷千葉の海辺で石松は何もしていないのに転んでしまい、膝をすりむいた経験を思い出す。

石松の傷を診た医者はこれをカマイタチの仕業だといい、たまたま起こった空気の渦の中心に真空ができるためにおこる現象だと説明した。

つまりバロアブローがカマイタチと同じ原理なら、パンチを放つことで空気に真空状態を作り、その渦によって相手にダメージを与えるという、わかったようなわからないような、ともかく超人しか成しえない技といえよう。

底知れぬ威力を持つバロアブローにより、たちまち傷だらけとなった石松は何を思ったか、再度ハリケーンボルトを打つためテイクオフを試みる。

(さっきの二の舞になるぞ!)

と誰もが思ったその刹那、

石松は落下の際、両手で膝を抱え身を丸くして相手に突っ込んだ。

そのため待ち受けていたティファニーは急所に照準を絞れず、凍りついたようにただ呆然と立ち尽くすのみ。

そこへ石松のハリケーンボルトが今度こそ炸裂する。

これにて逆転KO。バロアブロー敗れたり。

石松の体を張ったファイトのおかげで、パンチの謎が解けた剣崎は早くも日本代表の勝ちを確信するのであった。

第2戦~4戦ハイライト

第2戦は河井武士vsフェリスタ。

フェリスタも外見は先程のティファニーとほとんど同じ。

石松の試合を参考にバロアブローで巻き起こる空気の渦には距離的な限度があると考えた河井は距離を詰めながら、フェリスタに迫っていく。

が、しかし限界点を見誤り、フェリスタの放つバロアブローに奇襲され、目をやられてしまう

ここでフェリスタの口からバロアブローの距離は10mであることが明かされる。

つまり4.9m四方のリング上では場外へエスケープでもしないかぎり、逃げきれないということだ。

目をやられ視界を奪われた河井に容赦ないバロアの洗礼が下され、河井のコスチュームはたちまちボロボロに引き裂かれていく。

ここで唐突に河井のもう一つの特技であるピアノのレッスンの回想が入る。

姉・貴子とのレッスン中、河井はフォルテで弾くべきところをそれよりも強いスフォルツァンドで弾いてしまい、姉からスフォルツァンドの前ではそれ以下の音は無意味となってしまうという指摘を受ける。

この経験が時空を超えて、ボクシングの戦略に無理やりこじつけられることになる。

彼のパンチが巻き起こす空気の渦をフォルテとすれば、スフォルツァンド(河井のフィニッシュブロー/ジェットアッパー) をもってすれば、彼のパンチは無意味だ。  河井 談

フェリスタのバロアブローをフォルテと仮定し、自分のJアッパーこそが、それを凌駕するスフォルツァンドであると決めつけるあたり、かなり強引ではあるが、そこはマンガなのである程度仕方ない。

ともかくピアノにヒントを得た河井の策は功を奏す。

フェリスタがバロアブローを打った瞬間にJアッパーを打ち込み、バリアブローを無力化するばかりか、その威力が跳ね返ってフェリスタに大きなダメージを与えた。

こうなればもう、河井の独壇場。

もう一発だめ押しのJアッパーが至近距離から決まり、フェリスタを完膚無きまでにKO。

これで日本の2連勝。

第3戦は志那虎一城vsシルビイ(見た目変わらず)

1戦、2戦目を見て、バリアブローを完全に見切った志那虎は得意の神技的ディフェンスでシルビイのパンチをかわしまくり、最後は必殺のS.R.S(スペシャルローリングサンダー)でKO、わずか数分で瞬殺。

第4戦は剣崎順vsクロディーヌ(見た目変わらず)

日本の勝利はもはや決まっているため

なんだ、あいつらまだやるってのか、まったくめんどうくせェー」とかいいながら、かったるそうに剣崎リングイン。

試合前はバロア兄弟の謎のブローに散々びびっていたくせにパンチのからくりがわかったとたん、急に態度が変わり過ぎだと思わないでもない。

さっきとえらいちがいだなあ」と石松のつっこみが聞こえてきそうだ。

剣崎は天才を自負してはいるが、案外臆病な一面があるのかもしれない。

それはともかく、この試合も相手のバリアブローはかすりもせず、剣崎の右ストレート一発であっけなく終わり。

残すは大将戦のみとなった。

デビルプロポーズVSブーメランスクエアー

大将戦は日本のエース高嶺竜児と英雄ナポレオンの対決。

ナポレオンは兄弟唯一の金髪?

さすがに大将だけあって、他の4人とはオーラの出方がちがい、何とも神々しい雰囲気だ。

試合開始のゴング。

ゴングが鳴るやいなや、ナポレオンは何を思ったか、四方に張りめぐらされたロープをバロアブローで全て断ち切るというまさに離れ業をやってのける。

やはりこの男のパンチは他の4人とは比べ物にならない威力を秘めているようだ。

何のまねだ

さすがに温厚な竜児もこの不可解な行動には疑問を抱く。

この戦いの勝敗は日本代表勝利ですでに決まっている、しかしあなたは私には勝てない

勝ちが決まっているのに、竜児だけが負けることは無意味なのではないかというのが、自分の勝利を信じて疑わない、上から目線のナポレオンの言い分だった。

おれたちの目標はあくまでも完全勝利だ」と竜児は力強くいい放ち、そのまま試合はスタート。

開始直後、いきなりナポレオンのフィニッシュブロー、デビルプロポーズが飛び出す。

バリアブロー最高峰のパンチにふさわしく、無数の薔薇が飛ぶド派手な演出付きだ。

これを食らった竜児、ロープが切られていたことも手伝って、場外へダウン。

少しばかり手加減をしておきました」とナポレオンの憎々しげな態度。

だが、竜児はいつも通り、ギリギリで立ち上がってくる。

デビルプロポーズに対抗するにはやはりブーメランスクエアーしかない。

竜児、ナポレオンの小刻みなバロアブローをガードを固めつつかいくぐり、何とかスクエアーを決め、一矢むくいる。

普通ならこれで、食らった相手の体が回転し場外へ吹っ飛んでフィニッシュ。

のはずがやはりフランスの英雄は一味ちがう。

ナポレオンはスクエアーのヒットポイントを一瞬ずらして、ダメージを軽減したようだ。

ここでナポレオンは竜児をなめてかかっていたことを改め、その実力を認める。

そしてもう一度、2人は自身のスーパーブローを打ち合うべく拳をかわす。

デビルプロポーズVSブーメランスクエアー

SHWOKK!!!

今度こそスクエアーがクリーンヒットし、ナポレオンをKO。

しかし勝った竜児もコーナーポストまで反動で押し戻され、それなりのダメージを負っている状況を見ると、デビルプロポーズの破壊力もスクエアーに負けず劣らず一級品であることはまちがいない。

リンかけフィニッシュブロー破壊力ランキングでもあれば、十分ベスト10には入ってくることだろう。

日本代表、これで完全勝利のまま、ベスト4に進出。

準決勝ではさらなる強敵が彼らを待ち受けることになる。